2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ボクらの100日間戦争

覚醒剤というのは正しい生き方に挑んで敗れるための薬物であり、刹那主義の本質なのである。 なんてことをシニカルな顔つきでうそぶいてた頃もあった。 今は…覚醒剤って大事なものを確認するための試金石みたいに思えてる。 みんなと一緒に戦えた奇跡の100日…

収監前夜

保釈後の挨拶に行った次の日から今日まで約二ヶ月間、働かせてくれたーつまりは居場所を与えてくれたークリニックにありがとうを言いたい。 何を言ってもジャッジされないサンクチュアリ。責める者のいない場所では罪悪感も意味をなさない。ボクの中に根源的…

最後の余暇

午前中休みをもらってやって来たのはー最後の余暇に選ばれたのはー村上春樹ライブラリー。予約してやっと入れた。 入館時、図書館司書みたいな人に「こちらの階段は段差が二種類あるので気をつけてください」って説明を受けたのに…見事転んでしまった。危う…

さようなら全ての…

今は午前4時。日がのびたとはいえ外はまだ暗い。昨夜は0時にベッドに入った。2時くらいに目が覚め、だましだまし横になっていたがあきらめて起きることにした。 職場の同僚がここのところボクの夢をよく見ると言っている。夢の中でもボクは忙しい。人は眠…

生前葬なオレ

そろそろぼちぼち準備しなければ… ・冷蔵庫とブルーレイレコーダーの処分(もしくは買取業者へ引き渡し)。 ・預かってもらう荷物の郵送。 ・二年先までの郵便物の郵送処理。 ・携帯電話、WIFIの解約。 ・アマゾンプライムの解約。 ・Spotifyの解約。 ・部屋…

アイドルなオレ

初公判が終わった。判決は一週間後の同じ時間、同じ法廷になった。 心配をかけた友人たちに報告したら、もう一度会っておこう言ってくれる人たちも多く(今生の別れではないんだが)最後の晩餐の予定でスケジュールが埋まっていった。人気タレントになった気…

落星前夜

はたして有罪判決を前に壮行会を催してもらえる被告なんて世の中にどのくらいいるのだろう。ボクはやってもらった。誰かのやさしさにまず甘える。それが一番はじめにできる恩返しなのである。職場でこじんまりやろうとの計画だったが、あの人もこの人もとど…

ある薬物事件の公判の記録 5

検察は早口過ぎて何を言っているのかボクにはよく聞き取れなかった。ちなみに求刑は予想通りの2年半。それに対峙して弁護士の先生が最終弁論を述べた。 「@さんは2021年@月@日に覚醒剤を他者から購入して使いました。覚醒剤であることを明確に認識して…

ある薬物事件の公判の記録 4

真打ち登場。つまりボクの出番だ。 弁護士ーまずはあなたについて伺います。いまの仕事を教えてください。 ボクーはい。クリニックで訪問看護の業務をしています。 弁護士ーその仕事の内容について教えてください。 ボクー同僚の看護師と一緒に患者さんの自…

ある薬物事件の公判の記録 3

次に、職場のクリニックのソーシャルワーカーTさんが証言台に立った。 弁護士-まずはお名前を教えてください。 TさんーTです。 弁護士-どこに勤めていますか? Tさんー@クリニックという精神科、内科の診療所で働いています。 弁護士-そこはどのよう…

ある薬物事件の公判の記録 2

まずは、情状証人の一人目である前の職場の上司のIさんが証言台へ立った。 弁護士―あなたのお名前を教えてください。 IさんーIです。 弁護士―どのようなお仕事をしていますか。 Iさんー大学で教員を務めるかたわら、住まいを失った生活困窮を支援する活…

ある薬物事件の公判の記録 1

やってきたのは東京地裁。傍聴席には5,6人。知った顔ばかりだった。 人定確認の質問後、裁判官の「それではこれから覚醒剤取締法違反刑事事件の裁判を行います」という宣言で裁判ははじまった。 検察官の感情のない声がこれに続いた。 「控訴事実、被告人は…

公衆便所

前回の保釈中は、保釈中に覚醒剤の使用容疑で再逮捕されるという依存症としてはけっこうな仕上がり具合だったと思う。 使い倒すだけ使い倒して使い倒れてやるつもりだった。結局使い倒れることもできず霞ヶ関の駅のトイレで覚醒剤を打ってから裁判にむかった…

公判前夜

皆ボクのことを心配している。 普段ツイッターでつぶやいているようなことや、ブログに書いてあるような本心を裁判でも主張してしまうんじゃないかとハラハラしているようだ。 そこまでのTPO不全者ではないつもりだが、実際に証人質問の練習を弁護士の先生と…

白い思い出

火葬場に来るのなんていつ以来だろう。 ボクは縁起の悪い人間なので家族の集まりごとにはあまり呼ばれない。 その人の最期の顔がじいちゃんとばあちゃんに重なって、別れの場面なのにボクはうれしく思えた。 遺体が焼かれている間、みんなでその人の話をした…

ポジショントーク

今回の逮捕でやめることになった職場が送別会をしてくれた。 正直気乗のりはしなかった。だけど逮捕以来一度も顔をあわせていない同僚たちに直接あやまりたかったし事情を説明しておきたかった。そのぎりぎりの義務感が背中を押した。 送別会自体、涙もあっ…

怒れる男

その人は立腹していた。 ビールを数杯飲んで焼酎のボトルをあけてもその怒りはおさまらなかった。 どうしてこんな理不尽がまかり通るのかと声を荒げてボクに訴えた。 その理不尽とはボクが収監される話である。 「今回のことがあってボクの周りも色々と変わ…

夜まわりにて

ボクはとんでもなくだらしのない人間だから ちょうじりを合わせるために たまにちょっといいことをしたりする。例えば、路上生活をしている人に弁当を配ってまわる 夜まわりのボランティアをしたりだとか。今夜は都心をまわった。だいたいいつも同じ場所に同…

ツギノスミカ

月末までには今の住まいを引き払わなければならない。わかっているけれど後回しにしてしまう。 いつまでもふんぎりがつかないボクはこの部屋の象徴-鹿の角-を壁から外した。たったそれだけどボクにとっては厳かな儀式的瞬間だった。 あとは早かった。業者…

響く言葉

定期的にボランティア団体のIさんが面談してくれる。 面談と行っても面接室なんかで行われるいわゆるカウンセリング的なものではなく、人のいないカフェで日常会話するだけだ。 ボクは誰かの心配ごとにのるのは得意だが、自分について心配されるのが非常に…

修学旅行に行くかのように

82円切手を120枚。 精神科の処方箋とワクチン接種証明も大丈夫。 箱買いした二年分のコンタクトレンズ。保存液は持ち込めるんだっけ? 石鹸10個、タオル5枚、靴下5足、下着に肌着を5着、歯ブラシ10本。 あとは現金と持ち込む本を買い揃えれば準備万端。 出た…

いなくなった日

呼び鈴を鳴らして返事がなかった時点である程度の覚悟はついていた。その人は足が不自由で一人で外出なんかできない状態だったから。合鍵を使って入った部屋の中でその人は亡くなっていた。 支援者仲間と分担して警察と救急に通報する。やってきた消防隊員が…

建設的妄想

臨時特別給付金の10万円を誰かが受け取ったという話を耳にしたときには、ボクは「よかったですね」と笑顔で答えるようにしている。そうすると決めている。決めておかないと「いいなあ」と羨む本心が態度になって飛び出てしまうから。 メインの仕事をクビにな…

数の呪縛

二ヶ月間近くスマホを持てなかった。更新できていなかったツイッターのフォロアーがどのくらい減ってるんだろうと気にはなっていたが、二ヶ月前とほとんど変わっていなかった。 だれも自分のつぶやきなんか気にしてない。なんか笑えた。 自分からはめったに…