白い思い出

火葬場に来るのなんていつ以来だろう。

ボクは縁起の悪い人間なので家族の集まりごとにはあまり呼ばれない。

その人の最期の顔がじいちゃんとばあちゃんに重なって、別れの場面なのにボクはうれしく思えた。

遺体が焼かれている間、みんなでその人の話をした。ボクも思い出した。

その人はひとりで生活をしていて、ある時ボクにゴミ袋を持って来てほしいと連絡をしてきた。その人から何かを頼まれるなんてそんなにないことだったのでボクは嬉々として家にあったゴミ袋を何枚か掴んでその人の元へ行った。「このサイズでいいですか?」といってゴミ袋を開いたときに、注射器がぽとっと落ちた。ボクは固まった。その人は不自由な足をかばいながらゆんくりとしゃがんでその注射器を拾い「危ない遊びはやめなさい」と言ってボクに渡してくれた。ボクは黙って受け取った。かなわないなあと思った。それがその人と会った最期だった。

骨はきれいな白だった。覚醒剤みたいにきれいだった。

白い骨になったその人は骨壷に入ったけど、この思い出はボクの記憶にいつまでの残るだろう。

 

収監まで後14日

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