ある薬物事件の公判の記録 1

やってきたのは東京地裁。傍聴席には5,6人。知った顔ばかりだった。

人定確認の質問後、裁判官の「それではこれから覚醒剤取締法違反刑事事件の裁判を行います」という宣言で裁判ははじまった。

検察官の感情のない声がこれに続いた。

「控訴事実、被告人は法的の除外事由がないのに令和3年11月中旬頃から同月@日の間に、日本国内のいずれかにおいて、覚醒剤のメチルアミノプロパンを自己の身体に摂取し、もって覚醒剤を使用したものである。罪名および、罰条、覚醒剤取締法違反……以上の事実につきご審議願います」

色々とある裁判の通過儀礼を終えて、このあとふたりの情状証人、ボクの証言となる。さてどんな一時間になるんだろう。そのときのボクはめずらしく緊張してこわばった顔つきをしていた。