いなくなった日
呼び鈴を鳴らして返事がなかった時点である程度の覚悟はついていた。その人は足が不自由で一人で外出なんかできない状態だったから。合鍵を使って入った部屋の中でその人は亡くなっていた。
支援者仲間と分担して警察と救急に通報する。やってきた消防隊員が蘇生処置を施す。明らかに死んでいるのに…。見てられなかった。
訪問看護をしているとこういう場面に出会うことも少なくない。だけど刑事が言う「今日だけで5件目なんですよ」という言葉に「人の死を件数なんかで言うな」と、いらつける誠実さはまだ失っていない。
通報者ということで駆けつけてきた刑事から簡単な事情聴取を受けた。きっとボクの前科や保釈中であることはすぐにわかるはずだ。容疑者になるかもなあ。みんなの前で腕を見せろなんて言われたらやだなあ(かつてそういう経験がある)。その人の死に、一生に一回だけの大切な場面に、100%の悲しみにひたれない自分が悲しい。
「後はこちらでやりますからみなさんお帰りになられて結構です」と刑事が言った。
立ち去りにくいが居続けることは許されない。
誰かに何かを提供する仕事なのに、いつも別れにはやってあげれなかったことばかりを思い出す。福祉の世界に身を投じる者は皆欲深い。自分一人の幸せだけじゃ全然足りないんだから。
収監まで後21日
こんな夜には海外のミステリーを読む。どうせ寝れないんだから。
こう