KM百景 1
KM1 覚醒剤は嵐だった。思考を吹き飛ばし、感情を弄び、時間を取り込み、生活をなぎ倒し、するりとボクにとりついた。さてこの内なる嵐どうしたものか。
KM2 理性を捨てるためのクスリを理性でコントロールしようとるする無様。
KM3 薬物で捕まった芸能人のことを無条件に好きになる(NT以外)。
KM4 覚醒剤が違法じゃなければボクは誰も傷つけることはなかった。
KM5 「やめる」は荷が重い。せいぜい「使わない」くらいで勘弁してくれ。
KM6 危険ドラッグ?危険じゃないドラッグなんてあるのか?
KM7 覚醒剤は脳に作用する。性器に作用はしない。なのに気持ちいい。つまりは性行為は脳に頼る部分が大きい。
KM8 あの~確かに薬中ですけど、ほぼほぼシラフで生きてるんですよね。
KM9 眠たくても嫌われても年をとってもやめられない♪覚醒剤ってボクにとっての「ダイアモンド」なんです。
KM10 ラッシュも使ったことのないようなやつにあーだこーだ言われたくない。
KM11 一度使ったあの日から刹那の欲がつきまとう。満足できない飢餓地獄。使ったところで同じこと。残る乾きがこの身を打つ夜。
KM12 心から反省してるって言ったところで許してもらえないから、もう反省しない。
KM13 使う理由はいくらでも語れるが、使っていない理由は巧く説明できない。
KM14 シャワ浣の常習による浴室の便所化。
KM15 おもわぬ場所にローションがついていて驚く。
KM16 たまに水垢をきれいに落とすフェチの人がいてピカピカに磨き上げてくれる。
KM17 3ヶ月かけてつけた筋肉が二晩ほどで消えてなくなる。
KM18 街行くかわいい男子を凝視する。
KM19 いつかキメてディズニーランドに行ってみたいなあ。
KM20 やわなハートが痺れる。ここちよい針の痛み♪
KM21 「ダメ絶対」がイけてなんじゃなくて「ダメ絶対」の価値しか受けつけない社会がイけてない。
KM22 どのコンビニ、どのミネラルウォーター、どのホテル、みんなそれぞれ型がある。
KM23 普通の不安薬や眠剤じゃ眠れない。
KM24 「いつもはこんなんじゃない」とキメ友への必死の言い訳。
KM25 生活費におけるローション代の締め率アップ。
KM26 何も生み出してないのに出産直後の妊婦のような顔つきになる。
KM27 部屋が臭う。
KM28 キメ明け、何か食べると眠くなる。起きて食べてまた熟睡する。
KM29 たまにシャワーノズルからティンカーベルがトリプルアクセルしながら出てくる。
KM30 気持ちよくて、それはとてつもなく気持ちよくて、気持ちよさをシェアする悦びも忘れてしまうほどどうしようもなくて、仕方なくて、そう!キメセクはセックスじゃない。
KM31 覚醒剤は欲望を刺激し満たすけれど完璧に満足させてはくれない。まだもう少しいけるんじゃないかという絶妙に未完成な快楽でもって次を期待させる。
KM32 スリップの理由を考えたくないのは、次にスリップできなくなるからだ。
KM33 首のない使徒のように落としたパケを一晩中探し回る。
収監まで後34日
『超訳 ニーチェの言葉』フリードリヒ・ニーチェ