弟よ

「弟さん帰ってきてるみたいですよ」と弁護士の先生が教えてくれた。母親から聞いたらしい。

弟は妻と子供を残し数年前からとある社会主義国に単身赴任をしている。コロナ禍なので、帰国はできないだろうと思っていたがどうにか帰ってきたようだ。

物理的距離が近づいたことで、迷惑をかけてしまっている罪悪感も大きくなったが、両親のことを考えると少し安心した。

幼少時からボクはひとつ下のこの弟を頼って生きてきた。ボクはどんなものを欲しがったら両親が喜ぶかわからなかった。ボクはどんな態度でふるまえば両親が安心するかわからなかった。明らかに自分は普通じゃないという自覚はあったからいつも普通を気にして生きてきた。普通に生きようと歪なりに努力した。弟がいたおかげで普通を学べ真似ることができた。

ただし同時に両親は、正しい弟から少しズレるボクの特性を常に目の当たりにし、怯え続けることになったんだけど。一長一短。ものごとはうまくいかない。

ボクは弟に全面的に感謝している。弟の健全さがボクの自由の担保となり、心置きなく道を踏み外せた。今のボクには返せるものはなにもない(何かをしてほしいなんて思ってないだろうけど)。だからボクはきちんと距離をとって生きていこうと思う。関係ない他人になろうと思う。ごめんね。こんなで。外に出たら連絡先消すから。許してな。

 

 

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ガリレオの苦悩』東野圭吾

ガリレオ、そんなに苦悩してないやん。