ひとつきれいにすれば、ひとつやさしいになる
「ひとつきれいにする。ひとつやさしいになる」
以前の職場のトイレにはそんな張り紙をしていた。
Coccoの名言「ひとつ痛いを出す。ひとつやさしいになる」のもじりだ。
ここでも二日に一回トイレ掃除の時間がある。そのトイレ掃除をホストくんは一切やろうとしない。ボクかスリ師さんがやる。ホストくんは「あざーす」とは言ってくれるが、やってくれてラッキーとも思っていない感じだ。
世界は広い。やってもらうことをなんとも思わない人間の存在をここではじめて知る。交代でやろうと思うのが普通の感覚だろうが、まあ数分でやれるトイレ掃除ごとき目くじらをたてることもない。こういう小さな不平等をよしとして成り立つコミュニティがボクは好きだ。
「もし職場に復帰できたら率先してトイレ掃除をやる」ボクはそう願掛けした。
トイレからのリスタート。なんかモテるような予感。とてもいいんじゃないか。
『食堂かたつむり』小川糸
「ふがいない僕は空を見た」もそうだけど、本当に面白い小説の感想って書きにくい。